【見どころ解説】教科書に載るものばかりの『正倉院の世界』展がすごい!展示品ベスト6を解説!

来週2019年10月14日(月・祝)から11月24日(日)まで、東京・上野の東京国立博物館で御即位記念特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」が始まります。

正倉院と法隆寺の宝物約110件。正倉院だけで43件も東京にも来るのはレア。歴史や美術の教科書に載るものばかりなので、是非実物を見たいところです。

東京で見られるのは5年に1回の貴重な機会!

正倉院宝物は宮内庁が整理済みの宝物だけで9000点以上!

そのうち約70点が毎年10月〜11月に奈良国立博物館で正倉院展として展示されていますが、東京に来るのは5年に1回しか来ません。

前回は2014年の「日本国宝展」で、この時正倉院宝物は11点しかなかったから、今回は前回の4倍の物量!

今回は正倉院がメインテーマで、しかも天皇陛下御即位記念で気合入ってます。これ以上ない機会でしょう。

正倉院とは?

画像はWikipediaより引用

正倉院の本来の意味は、大和朝廷下における公的施設が設置した、穀物や宝物を納める倉庫=正倉が集まっている一廓を指します。

現在唯一の遺構が奈良・東大寺の正倉院です。だから一般的には東大寺の正倉院を指し、固有名詞化しています。

東大寺正倉院のはじまりは、今から約1260年前の奈良時代。崩御された聖武天皇の四十九日法要の時に、后の光明皇后が天皇の遺愛品や薬を納めたのがきっかけ。

東大寺は聖武天皇直々の願いで建てられた公的なお寺であり、国家鎮護を目的に全国に建てられた国分寺のトップ「総国分寺」でもあります。聖武天皇の遺愛品を納めるのにはこれ以上ない適任です。

(東京・国分寺市の国分寺は、かつて国分寺があった場所だから地名として残っているわけですね)

その後も、正倉院は東大寺の重要な法会に用いられた仏具などの品々なども含め、厳重に保管してきました。

正倉院宝物の素晴らしさ

正倉院に納められる宝物は、天皇が愛用した宮廷の調度品、東大寺というトップクラスの寺院が所有する寺院用具をはじめ、量はもちろんのこと、バラエティも豊か。

その品々は、広大な範囲で展開した文化交流の成果が凝縮されていること。宝物の原材料は、中国からアフリカまで、当時の世界文化圏のほぼ全域を網羅しているんです

また、それに施された意匠には、当時最高水準の高度な制作技法や、新様式が見て取れることも、特筆すべき点です。

では、今回の展覧会で展示される中でも、是非実物を見ておきたいおすすめの展示を紹介していきます!

おすすめの展示作品 ベスト6

すべての始まり・東大寺献物帳(国家珍宝帳)【前期展示】

まずは、『国家珍宝帳』。これは光明皇后が正倉院に納めた宝物の品目帳

国家珍宝帳(部分) 奈良時代・天平勝宝8歳(756) 正倉院宝物 【前期展示 10月14日~11月4日】

光明皇后が、聖武天皇の遺愛品と薬を東大寺に奉献した際に、品々と一緒に納めた目録がこれ。

この記録あってこその正倉院宝物といっても過言ではない、非常に重要な記録です。

こちらは、 前期展示(10月14日~11月4日)のみ

天下の名筆・雑集【後期展示】

後期展示のみの『雑集』。

こちらは奈良時代・天平3年(731年)に書き終えた、聖武天皇直筆の書巻。聖武天皇は当時31歳です。

雑集(部分) 奈良時代・天平3年(731) 正倉院宝物 【後期展示 11月6日~11月24日』。 画像は宮内庁より引用。

『雑集』は、中国から伝わってきたものと思われる当時の極上の麻紙に、中国の六朝、隋、唐の時代の詩文145首を書き写したもの。

詩文のほとんどが、本国・中国で失われてしまった逸文が多く、文学資料としてかけがえのない代物です。

聖武天皇が、わずか1歳で亡くなってしまった王子の追悼のために書き写したとも考えられています。

几帳面な感じがありつつも、弱々しいというほどではない。メリハリがあってバランスも美しい、威厳や雅な印象がありますね。

聖武天皇の書風(字のテイストのこと)は、書聖といわれる中国六朝時代の書家・王羲之(おうぎし)を学びつつ、唐の初めの頃の書家・褚遂良(ちょすいりょう)の筆使いを取り入れた独自のスタイルといわれています。

褚遂良『孟法師碑』(部分)。画像はWikipediaより引用。

当時は貴重な染織品・紺夾纈絁几褥(こんきょうけちあしぎぬのきじょく)【後期展示】

紺夾纈絁几褥 奈良時代・8世紀 正倉院宝物 【後期展示11月6日~24日】。画像は東博サイトより引用。

褥(じょく)は卓上に敷く敷物のこと。テーブルクロスのようなものですね。こんな絢爛豪華なテーブルクロス、自分だったら使えませんがw

聖なる樹の下に動物や鳥などが描かれた文様は、ササン朝ペルシャ(現在のイラン)に起源を持ち、シルクロードを通って日本にもたらされました。

飛鳥時代以前の日本には、無地や縞、ジオメトリックなど、単調な柄物の布しかなかったといわれています。織物・編み物はあっても、高度な技術と手間のかかる複雑な染物はそれまでなかった

当時最先端のテキスタイルであることが伺えます。

文様の間は防染し白くくっきりと残り、赤、黄、緑、濃紺と見事に染め分けられています。

葉っぱの先端だけ、緑と黄色が美しく混色されています。そのほかの色が混色することがないという不思議。しかも、これがどのように染められているのか解明できていないという、ロストテクノロジー

天下の名香・蘭奢待(らんじゃたい)【通期展示】

黄熟香(蘭奢待) 東南アジア 正倉院宝物 【通期展示】。画像は東博サイトより引用。

正式名称は「黄熟香」(おうじゅくこう)というお香の原木。

足利義満、足利義政、織田信長、明治天皇らが切り取ったといわれる、天下人に重宝された名香。その香りは「古めきしずか」だといいます。

東南アジアで産出される沈香(じんこう)と呼ばれる種の香木で、ノミで中を空洞にしています。この加工は900年頃に始まったので、ゆえにこの香木は10世紀以降のものと推定されています。

蘭奢待」(らんじゃたい)という名は、その文字の中に”東・大・寺“の名を隠した通称です。

アニメ『モノノ怪』の鵺編(8・9話)で登場した名香「欄奈待」(らんなたい)の元ネタでもあります。

現存唯一のインド式琵琶・螺鈿紫壇五弦琵琶(らでんしたんごげんびわ)【前期展示】

聖武天皇遺愛の名器で、天平勝宝8歳(756年)に納められたものの一つ。

螺鈿紫檀五絃琵琶 唐時代・8世紀 正倉院宝物 【前期展示10月14日~11月4日】

この時納められました琵琶は本品とペルシャ式の2品あるのですが、今回どっちも来ます!

こちらは古代インドに起源を持つ五弦琵琶、その現存唯一の作例として有名な品です。

螺鈿(らでん)は、貝殻の内側の虹色に輝く部分を薄く切り取ってはめこむ装飾。

紫壇(したん)は古代から様々な用途に使われてきた頑丈な木材で、バラの香りがするものはローズウッドとも呼ばれています。

紫檀で作られた、螺鈿装飾の五弦式琵琶という意味です。写真の白い部分が螺鈿装飾ですが、赤黒く輝いている部分は玳瑁(たいまい)とよばれるウミガメの甲羅を使っています。

素材が豪華すぎw

螺鈿装飾で描かれいるのはラクダに乗り琵琶を演奏する異国風の人物で、この意匠はペルシャ様式

ちなみにこれ横向きになってます。これはなぜかというと、琵琶は横に抱えて演奏するので、その時に見えるようになってるんですね。

そして、この琵琶は背面の装飾がまたすごいのです。

螺鈿紫檀五絃琵琶 背面。画像は宮内庁サイトより引用。

宝相華文(ほうそうげもん)といわれる当時流行した仏教系の文様ですが、螺鈿と玳瑁で全面にあしらっています!

宝相華文といわれる文様は形が様々で定義が難しいのですが、特定の花を文様化しているのではなく、いろんな要素をとりいれた総合的・空想的な花を描く唐草模様の一種と思っていただければ間違いではないかな。

古代エジプトに起源を持つというパルメット唐草が東に伝わり、唐の意匠家が当時の流行にあうように、草だけだったものに花を取り入れて変化させた文様とみられています。

琵琶の形はインド式、表面の装飾はペルシャ式、背面は中国式という、世界的な文化交流の縮図

東西の文化の結集・国宝 竜首水瓶(りゅうしゅすいびょう)【後期展示】

国宝 竜首水瓶 飛鳥時代・7世紀 東京国立博物館(法隆寺献納宝物)【後期展示11月6日~24日】。画像は東博サイトより引用。

これだけ法隆寺宝物ですが、こちらも当時の世界的文化交流の縮図ともいえる名品。

丸いフォルムに、首が細長く伸びて鳥の頭みたいな差し口の水差しは「胡瓶」(こびん)と呼ばれ、これはペルシャ式の水瓶に起源をもつ形です。唐の宮廷で珍重され、それが日本にも伝わりました。

しかしこの竜首水瓶は、名前の通り差し口が竜の頭に置き換わっています。竜は中国由来。

さらにこの水瓶、ペガサスのような有翼馬がお腹に描かれているんです。有翼馬はギリシャ・ローマ神話に登場する伝説の生き物。

そう、これはシルクロードを通じて日本にもたられた、東西の文化が一品に凝縮された、キメラみたいなすごい一品なんです。そんな意義のある品だからこその国宝。是非実物を鑑賞したいものです。

 

以上、『正倉院の世界』展の見どころ解説でした!

先日別の展示でチラシを発見し、「やべー!!」ってなったので紹介させていただきました!

こんな名品ばかり揃うのそんなにないと思います。必見ですよ!

展示概要

展覧会名 御即位記念特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」
会期 2019年10月14日(月・祝)~11月24日(日)
前期/10月14日(月・祝)~11月4日(月・休)、後期/11月6日(水)~11月24日(日)
場所 東京国立博物館 平成館
住所 東京都台東区上野公園13-9
開館時間 9:30~17:00
※金・土、11月3日(日・祝)、4日(月・休)は21:00まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日、11月5日(火)
※ただし10月14日(月・祝)と11月4日(月・休)は開館
観覧料 ・当日
一般 1,700円、大学生 1,100円、高校生 700円
・前売
一般 1,500円、大学生 900円、高校生 500円
・団体
一般 1,400円、大学生 800円、高校生 400円
※中学生以下は無料
※団体は20名以上
※障がい者とその介護者1人は無料(入館時に障がい者手帳等を提示)

参考